女性の再婚禁止期間について考える!
民法733条1項の規定では「女は、前婚の解消または取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。」とされています。国連から女性差別と勧告を受けている問題の一つでもあり、その規定の持つ合理性、妥当性の有無について考えてみましょう。今日は「女性の再婚禁止期間について考える!」と題して、お送りしたいと思います。
<離婚率と再婚率の上昇>
この制度の目的は、父子関係を確定し、父子関係をめぐる紛争を未然に防止することです。今や離婚率が1.73%となり、およそ3組に1組の割合で離婚していることになりますが、その後を考えますと、実は離婚後の再婚率も上昇していると言われています。30代前半までの離婚男性が5年以内に再婚する割合は35%を越えました。同様に20代のうちに離婚した女性が5年以内に再婚する割合も30%を超えているのです。こんな実情も踏まえて考えて見ますと、女性だけが離婚から再婚まで一定の禁止期間を設けていることが、果たして必要なことなのでしょうか?。
<なぜ女性の再婚禁止期間があるのか>
冒頭で民法の条文を示した通り、女性は離婚後100日間経たなければ再婚できません。つまり、女性だけが離婚から再婚までの期間を拘束されている、と言うことができます。その理由は、離婚後すぐに再婚して妊娠していた場合、前夫との子どもなのか、それとも再婚後の夫との子どもなのかが、客観的かつ容易に証明できないからだと言われています。
<嫡出推定>
嫡出推定とは、妻が婚姻期間中に妊娠した子どもについて、法律上、夫の子どもであると推定することを言います。民法772条1項では「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。」、2項では「婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎(妊娠)したものと推定する。」と定めています。つまり、嫡出推定は、扶養義務のある父親を早期に確定させることが子どもの身分の安定につながり、それすなわち子どもの利益に帰するという考えに基づいているのです。
<再婚禁止期間がある理由>
例えば、女性が離婚してすぐ再婚し、すぐに妊娠した場合、生まれてくる子は先の民法722条2項の規定から、再婚相手の子供とも推定されますし、一方で離婚した夫の子どもとも推定されてしまいます。結果として子どもの父親がはっきりせず、子どもの扶養義務をどちらが負うべきか決められず、子供の身分が不安定になってしまいます。これが再婚禁止期間を設けている理由になります。
<再婚禁止期間の合理性が問われている>
ここまで書いてきましたが、既にお気付きの通り現在は、科学の進歩が目覚ましく、特にDNA鑑定のレベルは格段に向上している分野です。だとすれば子供が生まれてきた後に父子鑑定をすることで、扶養義務者を特定できてしまうので、再婚禁止期間の合理性そのものを疑問視する論調も多くなりましたので、今後の民法改正で、この規定が削除される可能性は大いにあると思われます。
<再婚禁止期間の例外規定>
DNA鑑定技術の発達の影響も含め、子供の父親が明確な場合は、再婚禁止期間を待たずに再婚できると言う例外措置を設けています。
①離婚する前に夫以外の男性の子どもを妊娠し、離婚後にその男性と婚姻した場合。
②離婚した夫と再び婚姻した場合。
③夫が3年以上行方不明で裁判離婚が成立した場合。
(家庭裁判所で失踪宣告の審判を受けた場合や、生死不分明で離婚した場合など)
④妊娠の可能性がない高齢者の再婚の場合。
⑤子宮の全摘出手術を受けた人が医師の証明書を提出し裁判所が受理した場合。
⑥前婚の解消または取消しのときに妊娠していなかった場合。
⑦再婚禁止期間中に出産した場合。
<最後に>
再婚禁止期間が100日に短縮されたのは平成28年ですので比較的最近のことです。それまで女性は離婚してから再婚するまでの間、半年も待たなければなりませんでした。一方で海外の状況はどうかと言えば、ヨーロッパを中心としたほとんどの先進国では、女性差別を理由に「再婚禁止期間」は廃止されています。北欧諸国は1968~69年、ドイツは1998年、フランスは2004年にそれぞれ再婚禁止期間を撤廃しています。アメリカ、イギリス、オーストラリアなどではそもそも再婚禁止期間が定められていません。しかし世界で二国だけですがバチカン市国とフィリピンは宗教上の理由から離婚制度そのものが無い国もあります。家族のあり方も多様に変化していることも踏まえれば、今後は再婚禁止期間を設ける事そのものの必要性が大いに議論されることになります。今日は、この辺で失礼します。
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